はじめに
情報過多の現代社会において、単なる広告宣伝だけで消費者の心を動かし、行動を変えることは難しくなっています。あなたのマーケティング施策は、認知向上には成功していても、実際の購買行動や顧客のロイヤリティ構築までには至っていないかもしれません。このギャップを埋める鍵となるのが「戦略PR」の考え方です。本記事では、PRの概念を根本から再定義し、マーケティングの新しい地平を拓いた『戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』の魅力をご紹介します。
概要
『戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』は、PRを「世の中を舞台にした情報戦略」と再定義し、企業が社会と効果的にコミュニケーションを取るための方法論を提示しています。著者の本田哲也氏は、PRの効果を3段階（「パブリシティの向上」→「パーセプション・チェンジ（知覚変容）」→「ビヘイビア・チェンジ（行動変容）」）に分け、多くの日本企業が第一段階のみで満足している現状に警鐘を鳴らしています。
本書では、世の中を動かすための「戦略PR」として6つの法則を提唱。国内外の最新事例を豊富に引用しながら、「なぜある商品が急に話題になるのか」「どうすれば人の行動は変わるのか」といった問いに対する答えを、体系的かつ実践的に解説しています。「商品力」や「宣伝力」だけでは人は動かないという前提に立ち、複雑化する情報環境においてブランドがいかに人々の心を動かし、行動変容を促すべきかを明らかにします。
主要なテーマと内容
本書の核心は「戦略PR」の6つの法則です。これらは単なる理論ではなく、実際のビジネスシーンで活用できる実践的な指針となっています。
1. おおやけ → 「社会性」の担保
現代では「ソーシャルグッド」と呼ばれる、社会課題解決を目指す潮流が強まっています。この法則は、世の中のニーズや社会課題と自社の商品を結びつけるPR手法です。
例えば、アリエールがインドで展開した「男性も洗濯を手伝おう」というキャンペーンでは、男女平等という社会課題と洗剤という製品を結びつけ、単なる商品宣伝を超えた社会的メッセージを発信。製品の価値を社会的文脈に位置づけることで、より深い共感を生み出しました。
2. ばったり → 「偶然性」の演出
データ解析技術の発展により、人々は自分の関心あることだけに触れるフィルターバブルの中で生活しています。そんな中、「偶然出会った」と思える新鮮な情報体験を演出することがPRの新たな課題となっています。
ニュージーランドの動物愛護団体SPCAは、保護犬の里親探しのために「犬が車を運転する」という予想外の映像を制作。この「セレンディピティ（偶然の幸運な発見）」を演出したことで世界的な注目を集め、多くの保護犬が新しい家庭に迎えられました。
3. おすみつき → 「信頼性」の確保
多様な「インフルエンサー」の影響力を活用し、共感系・事実系の第三者からのお墨付きを得ることで信頼性を高める手法です。SNSの発達により、従来のセレブリティだけでなく、専門家や一般消費者からの支持獲得が重要になっています。
重要なのは、単に有名人を起用するのではなく、製品やメッセージの文脈に合った適切なインフルエンサーを選定し、自然な形での推奨を得ることです。
4. そもそも → 「普遍性」の視座
「よくぞ言ってくれた」と思わせる本質的な価値転換を促す手法です。みんなが陰ながら思っていても言えなかったことを表現したり、原点回帰することで共感を得ます。
既存の価値観や常識に疑問を投げかけ、新たな視点を提供することで、人々の考え方や行動を変えるきっかけを作り出します。この法則は、社会の潮流を読み解き、時代の「そもそも」に立ち返る洞察力を求めます。
5. しみじみ → 「当事者性」の醸成
感情に訴え、「自分ゴト化」させることで行動変容を促す手法です。データや論理だけではなく、ストーリーテリングを通じて感情的な共感を生み出し、受け手が自分自身の問題として捉えられるようにします。
当事者意識が芽生えることで行動変容が起きやすくなります。ただ情報を伝えるだけでなく、どうすれば人々の心に響くストーリーを構築できるかが鍵となります。
6. かけてとく → 「機知性」の発揮
PRクリエイティビティの真髄は「とんち」にあると著者は説きます。一捻り入れることで相手の受容性を高め、他者と共有したくなるような内容を作り出す手法です。
ユーモアや意外性のある表現方法によって、人々の関心を引き、記憶に残るメッセージを生み出します。この法則は、情報過多の時代において、いかに「伝わる」コンテンツを生み出すかという課題に応えるものです。
こんな人におすすめ
- 広告宣伝の効果に限界を感じているマーケター – 認知度向上だけでなく、消費者の行動変容まで促したいと考えている方
- ブランドコミュニケーションの新しい視点を求めている方 – 従来の広告手法を超えて、社会と共鳴するブランディングを模索している方
- SNSやデジタルメディアの変化に対応しようとしている広報・PR担当者 – 複雑化した情報環境で効果的なコミュニケーション戦略を構築したい方
- 「なぜこの商品は話題になったのか」という成功の本質を理解したいビジネスパーソン – ヒット商品や話題のキャンペーンの背後にある戦略を学びたい方
書籍の基本情報
- タイトル: 戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則
- 著者: 本田哲也